「ほほう…。」

「次に首を差し出します。」

「首を差し出す?」

「はい。」

キャロルが頷くとレオンが目を丸くした。

「そっそれは中々物騒だな。」

「そうですね。
その後首を噛まれます。」

「えぇっ?!」

レオンが自分の腕を摩る。

鳥肌が立ち始めたらしい。

「最後に手首に噛み付かれて出血し、その血でシーツを血塗れにしておしまいです。」

「えっ何それ怖っ!!」

レオンが涙目になっている。

スプラッタは嫌いな様だ。

「そりゃ殿下も嫌がるよなあ…。
何そのホラー。
しかも夜にとか下手したら事件だぞ。」

「私も驚きましたよ。」

「恐ろしい目にあったんだなキャロル…。
ごめんな。
俺がお渡り次第で大逆転なんて言ったからだよな?」

「いえ、私もアグネス嬢の派閥が有利になればと思ってしまいましたので。」

ここに第三者がいればツッコミも入っただろうが、この部屋には天然馬鹿と引きこもり令嬢しかいない。

誰も真実を教えないまま勘違いし続けた会話は続いてしまう。

迷子が2人揃った所で迷子なのは変わらないのだ。

「しかし恐ろしい儀式なんだな…。
あっ俺昔お伽話で読んだ悪魔とかの召喚がそんな感じだったぞ!」

「ふむ…。
血塗れのシーツはそのままでないと意味がないと言っていましたし、もしかしたら本当に何か召喚…?」

「なっ何を召喚するんだよ。」

「そこは調べてみなきゃ分かりませんが。」

迷子が2人いても正しい道に出る事はない。

2人してどんどん迷っていくだけだ。

きっと王家秘伝の召喚術があるのだと2人は結論付けて朝ご飯のパンケーキに手を付けた。

レオンはお渡りの真実が分かってスッキリしたのか手元の書類に何やら書き込んでいる。

キャロルも納品書に取り掛かろうと口にパンケーキを銜えたまま事務机に向かう。

「あっそう言えば今日の茶会行っていいか?」

「大丈夫なんじゃないですか?
でもどうしたんです?」

「俺も貰った調査用紙仕上げたからな!
側近の情報量を見せ付けてやりたくて。」

昨日貰ったはずの調査用紙がびっしり埋まっている。

見ると赤ん坊の時にお気に入りだった枕の色や銘柄まで書かれていた。

最早怖い。

「…レオンって何歳から殿下と一緒にいるんですか?」

「ん?
俺は生まれも育ちも王宮だからずっと一緒だぞ。」

そりゃ情報量が段違いだろう。