ルシウスがシャワーを浴び終わる頃、いつも通りレオンがやって来た。

「キャロルお前すげえな。
離宮中大騒ぎになってんぞ。」

伝わるスピードが尋常ではない。

あのメイドもしや離宮の前でも叫んでいたのではなかろうか。

「あっそれとこれフワリー嬢から手紙。」

「あっありがとうございます。」

手紙は封筒に入っておらず字も走り書きであった。

慌てて書いたのだろう。

「…10時茶会来られたし。
果たし状ですかね?」

「いやいや、話聞きたいんじゃねえの?
晴天の霹靂だしな。」

それもそうかと手紙を事務机に置きソファーに腰掛ける。

「で?
俺もよく分からないんだけどどういう事なんだ?」

レオンも聞きたかったのかワクワクした目でキャロルを見ている。

しかしキャロルも正直よく分かっていない。

「どういう事と言われましても…。
んーお渡りのフリをしたらしいと言いますか…。」

「フリ?」

レオンが首を傾げる。

キャロルだって分からないのだ。

レオンはもっと意味が分からないだろう。

「キャロルがお渡りを受けた。
ただそれだけだよ。」

振り向くと頭を拭きながらルシウスが立っていた。

「えっでもキャロルがフリって…。」

「キャロルの勘違いだよ。」

こいつは堂々と嘘をつくタイプの奴らしい。

レオンは困った様にこちらを見て来るがキャロルも首を捻るしかない。

お渡りが何なのか分からない以上、昨日の事が本当にフリなのかどうかも分からないのだ。

「私は父上に報告に行って来るよ。
二人ともお願いだから余計な事しないで良い子にしててね?」

ルシウスがレオンとキャロルをサラッと脅してから部屋を出て行く。

余計な事とは何なんだろうか。

ルシウスの足音が遠ざかるとレオンが口を開く。

「で?」

「で、とは?」

「水臭いなキャロル!
ちゃんと教えろよ!」

「だから何をですか。」

レオンが唇を尖らせているが何となく腹が立つのは何故だろう。

ムカつく顔って奴だろうか。

「お渡りっての受けたんだろ?
結局あれ何するんだ?」

「あぁそこですか。
フリと殿下が昨日は言ってたので本当は違うかもしれませんよ?」

「まっそれでもいいから。
俺気になってたんだ。」

レオンが目を輝かせているが楽しい話ではない。

「そうですね。
まずベッドに乗ります。」