その後レオンとキャロルは2人して正座させられていた。

理不尽ではないだろうか。

勝手に勘違いして勝手に拗ねたのはルシウスなのに。

1時間程お説教を聞いた所で震えながら昼食を持って来てくれたメイドのお陰で話は終わった。

ありがとうメイドさん。

君の勇姿は素晴らしい。

持って来てくれた昼食をローテーブルに並べて漸く一息ついた。

「なあなあキャロル。」

「なんですか?」

「その首どうしたんだ?
まさか殿下に…。」

「その通りですが。」

キャロルがそう返すとひぃっとレオンが悲鳴を上げる。

中々グロテスクな事になっているのだろう。

「でっ殿下!
いくら腹が立ったからって噛み殺そうとする事ないだろ?!
ほら見ろこんなに青くなってる!
暫く消えないぞ!」

「消えないだろうね?」

レオンが抗議するがルシウスは取り合おうとしない。

「それにキャロルだって一応女の子なんだぞ!
殺りたいなら俺にすれば良いだろ!
弱い方に手を出すなんて最低だぞ!」

ほら噛めよ!とレオンが首を差し出すがルシウスは手で押しやった。

リアムは何とも言えない顔でその光景を見ている。

「はいはい。
レオンを敵だと思った私が馬鹿だったよ。」

「俺が敵!?
殿下、頭おかしくなったのか?」

「書類と状況を見て頭に血が上ってたのは認めるよ。」

そう言ってルシウスは昼食に視線を戻す。

レオンはまたキャロルに向き直る。

眉毛が八の字になっていた。

「キャロルごめんなぁ。
さすがに俺も噛み殺されそうになるとは思わなくて。
まだ痛いよな?
軟膏塗って包帯巻いてやろうか?
多分早く治るぞ?」

「巻かなくて良いよ。
隠すのも許さないから。」

まさかのNGである。

「いやでもさすがにこれは目立つぞ?」

「…目立てば良いんだよ。」

だけど、と食い下がるレオンをリアムが止める。

これ以上殿下を煽るなとボソボソ囁くのが聞こえた。

「…レオンにも言いたい事は沢山あるんだよ?
最近執務室に令嬢達が押し掛けてくるのに毎日レオンはいないし?」

「うぐっ。」

「かと思ったらレオンの私物がここに運び込まれてるし?」

「はぎゃっ。」

「側近としてどうかと思わないかい?」

ルシウスの笑顔と共に部屋が極寒の雪山の様な空気になった。