ルシウスの異変の理由はあれから数日程で分かる事になった。

レオンと共に市場に串焼きを買いに出ると掲示板の前に人垣が出来ていたのだ。

何となく興味が湧いてレオンと潜り込む。

「凄いな王子は…。」

「この国は安泰ね。」

そんな会話が聞こえてきてルシウスに関する事だろうと何となく予想した。

だが貼り付けられた羊皮紙の中身に目が釘付けになる。

『ハリー第二王子、極東の街バヌツスの復興に成功!
王位に1歩前進か』

羊皮紙にでかでかと書かれた煽り文にキャロルは首を傾げる。

バヌツスの街にいたがあの時ハリー第二王子などいただろうか?

手柄というならそもそもあれはルシウスの手柄になるんじゃないのか?

キャロルの横でレオンが唇を噛み締めている。

「ねえレオン、これ…。」

「…王妃様にしてやられたんだ。
気にすんな。」

レオンに手を引かれ掲示板の前から離れる。

気にするなと言いながらレオンの表情は暗い。

「王妃様ってどういう事?」

キャロルの問いかけに周りをキョロキョロと見渡してから小声で喋り出す。

「誰にも言うなよ。
キャロル、お前殿下と第二王子の母親が違うの知ってるか?」

「いや、そもそも第二王子の存在を今知りました。」

「…さすがだな。
まあ殿下の母親、最初の王妃様は殿下を生んですぐ亡くなってんだ。
そんで新しい王妃様との子供がハリー第二王子。
現王妃様としちゃ実子であるハリー第二王子を王位に着けたいわけよ。」

「はーなるほど。
泥沼になるやつですね。」

「まあそう言う事だ。
そんで殿下の母親はもともと子爵位で王妃としちゃ爵位が低い方でな。
現王妃様は元々隣国の第一王女様。
貴族の中にはやっぱり血筋を重んじる奴らも多くて2家の王族の血を引く第二王子派は結構多い。
陛下は実力と長子である事を優先して一応殿下派なんだが。」

キャロルはなるほどなるほどと頷く。

聞く限りルシウスが劣勢である。

「んでまあ昔から暗殺やら毒殺やらで狙われてたんだが、それを返り討ちにして騎士団長になったり桁外れの魔力持ってたり今回のバヌツスの復興みたいな功績を上げて実力で黙らせてたんだ。」

「…。」

今さらっと暗殺や毒殺と聞こえたが空耳だろうか。

いや王宮内ではよくある事だとは聞いているが身近にいる人間が狙われているとなると余り気分の良い話ではない。