「うーん…夏と言えばやっぱ海だろ!」

「はあ、海ですか。」

「あとはえーっとキャンプと肝試し!」

「この前野宿という名のキャンプはしましたけどね。
あと臨死体験っていう肝試しも。」

「あれは遺跡でだろ!
海ではしてないじゃないか!」

「船には乗ったじゃないですか。」

「俺は殆ど海を見てない!」

行きは二日酔いで撃沈し帰りは疲れ果てて爆睡していただけだ。

自業自得だろう。

「それに船じゃなくて俺は砂浜で遊びたい!
キャンプしたい!
バーベキューしたい!」

クッションの上でじたばたと手足を動かして暴れている。

子供かと言わざるを得ない。

「行けばいいじゃないですか。
どうぞごゆっくり。」

「1人でなんてつまんないだろ!
キャロル行こうぜー!
行こう行こう!!」

キャロルははぁと溜め息を着き窓の外に目をやる。

痛い位に日射しが強い。

塔の中だから涼しいが外は灼熱だろう。

何故わざわざ灼熱地獄に身を置かねばならぬのだ。

しかしレオンは真剣な目でキャロルに訴えてきている。

…非常に面倒臭い。

その目の暑苦しさに負け先に目を逸らしたのはキャロルであった。

「…分かりましたよ。
行きましょう海。
バーベキューでも砂浜を火の海にでも何でもやりましょう。」

「やった!!
じゃあ俺荷物準備してくる!!
キャロルも準備しとけよな!!」

レオンが満面の笑みを浮かべて塔を飛び出して行く。

キャロルは毛玉を撫でてから溜息を吐きのろのろと立ち上がる。

荷物を準備せねばなるまい。

遺跡に行く際に使った鞄に適当に荷物を詰めて行く。

何が悲しくて涼しい所からわざわざ熱い所に行かねばならんのだ。

そしてレオン如きの目に負けた自分が悔しい。

もう一度窓の外を見たがやっぱり日射しはギラギラと照り付けている。

突然大雨でも降れば良いのに。

恨めしげに空に念を飛ばすが空は雲一つない快晴のままであった。