広大な王宮の敷地の外れ。
鈍色の森の入口にひっそり佇む塔。
蔦が絡みつき人から忘れ去られた場所。
錆び付いてギイと音を立てる扉を開けると石造りの階段が塔の上まで伸びている。
その階段の1番上にある昔は王家の罪人を幽閉していたとされる部屋。
室内には古びた事務机と椅子。
床には撒き散らされている羊皮紙。
ベッド代わりに置かれている年季の入ったソファー。
そんな部屋の真ん中には珍しくお出かけ予定なのかいそいそと鞄に荷物を詰めている部屋の主がいた。
この塔の現在の住人キャロルである。
ーコツコツ
鞄から顔を上げるとこの部屋に唯一ある窓を開けた。
「おはよ、鳥。」
窓辺には脚首に籠を括り付けた真っ黒な鴉が2羽。
キャロルは毎朝来るこの鴉達の名前を知らない。
一応鳥と呼んでいる。
鴉はその呼び方が気に食わないのか目付きの悪い目をもっと悪くしてキャロルを見た。
キャロルは気にせず籠に手を伸ばし中身を受け取る。
休暇申請書の許可書と外出許可証を見つけちょっとだけ機嫌が良くなった。
後は休暇後の仕事の依頼書ばかりだろうから机に放り投げておく。
帰ってから見れば良い。
そして代わりに机に投げてあった小型の魔道具と説明書と納品書を取り上げ鴉の籠に乗せる。
「行っていいよ。
じゃあね鳥。」
もう一度不満げに鴉は鳴くと飛び立って行った。
キャロルはその姿を見送ると窓を閉め部屋の真ん中にあった鞄を背負う。
キャロルは珍しくご機嫌であった。
表情は変わってないが。
3ヵ月前から申請していた休暇願いが漸く通ったのだ。
鼻歌を歌ってやっても良いかもしれないと微妙に上から目線で思いながら扉を開けドアノブに掛かる札を裏返しCLOSEに変える。
まあ変えなくても滅多に誰も来ないのだが。
足取り軽く階段を降りながら今日の予定を確認していく。
完璧な計画だ。
さすが私だ。
自分を内心で褒め称えながら一番下の錆び付いた重い扉を押す。
「あっおはようワインスト嬢。」
…どうして奴が此処に。
「本当にここに住んでるんだね?
呼び出してばかりだと申し訳なくて迎えに来たんだ。」
迎えに来た?
何故?
そんな予定は完璧な計画の中にはない。
「おーいワインスト嬢?
あれ?
もしかして朝早くて寝惚けてるのかい?」
鈍色の森の入口にひっそり佇む塔。
蔦が絡みつき人から忘れ去られた場所。
錆び付いてギイと音を立てる扉を開けると石造りの階段が塔の上まで伸びている。
その階段の1番上にある昔は王家の罪人を幽閉していたとされる部屋。
室内には古びた事務机と椅子。
床には撒き散らされている羊皮紙。
ベッド代わりに置かれている年季の入ったソファー。
そんな部屋の真ん中には珍しくお出かけ予定なのかいそいそと鞄に荷物を詰めている部屋の主がいた。
この塔の現在の住人キャロルである。
ーコツコツ
鞄から顔を上げるとこの部屋に唯一ある窓を開けた。
「おはよ、鳥。」
窓辺には脚首に籠を括り付けた真っ黒な鴉が2羽。
キャロルは毎朝来るこの鴉達の名前を知らない。
一応鳥と呼んでいる。
鴉はその呼び方が気に食わないのか目付きの悪い目をもっと悪くしてキャロルを見た。
キャロルは気にせず籠に手を伸ばし中身を受け取る。
休暇申請書の許可書と外出許可証を見つけちょっとだけ機嫌が良くなった。
後は休暇後の仕事の依頼書ばかりだろうから机に放り投げておく。
帰ってから見れば良い。
そして代わりに机に投げてあった小型の魔道具と説明書と納品書を取り上げ鴉の籠に乗せる。
「行っていいよ。
じゃあね鳥。」
もう一度不満げに鴉は鳴くと飛び立って行った。
キャロルはその姿を見送ると窓を閉め部屋の真ん中にあった鞄を背負う。
キャロルは珍しくご機嫌であった。
表情は変わってないが。
3ヵ月前から申請していた休暇願いが漸く通ったのだ。
鼻歌を歌ってやっても良いかもしれないと微妙に上から目線で思いながら扉を開けドアノブに掛かる札を裏返しCLOSEに変える。
まあ変えなくても滅多に誰も来ないのだが。
足取り軽く階段を降りながら今日の予定を確認していく。
完璧な計画だ。
さすが私だ。
自分を内心で褒め称えながら一番下の錆び付いた重い扉を押す。
「あっおはようワインスト嬢。」
…どうして奴が此処に。
「本当にここに住んでるんだね?
呼び出してばかりだと申し訳なくて迎えに来たんだ。」
迎えに来た?
何故?
そんな予定は完璧な計画の中にはない。
「おーいワインスト嬢?
あれ?
もしかして朝早くて寝惚けてるのかい?」