もしも明日があるのなら、君に好きだと伝えたかった。


「俺、一部始終見てたし、言い訳は通用しねーから。わかってんのか? おまえがやったことは犯罪だぞ」

慎太郎はまっすぐに優里を睨みつける。

「は、なに言ってんの。っていうか、それ中身はただの水だから。それに実行したのはあたしじゃないし。ちょっと驚かせてやろうと思っただけじゃん。なにマジになってんの? バカみたい」

「やっていいことと悪いことがあるだろ? おまえのやったことは『ちょっと驚かせてやろうと思っただけ』では済まされねーんだよ!」

慎太郎のこんなに怒った顔を見るのは初めてかもしれない。

不機嫌なオーラをまといながら、迫力のある声色で優里に詰め寄る。

「だから中身はただの水だって言ってるじゃん。結果、誰にも怪我させてないし傷つけてもいない。なにをそんなに怒ってんの? ウケるんですけど」

優里は慎太郎の迫力に怯むことなく、悪びれる様子もない。それどころか、笑っている。

「本気でそう言ってんなら、マジでありえねーわ」
「あーもう。うっざ。あんたに説教される覚えはないんだよ! 興醒めしたからもう帰る。美鈴、行くよ」

プイと背を向けて立ち去る優里。

美鈴は未だに怯えたように全身を震わせている。

「美鈴! 聞いてんの?」
「あ……う、うんっ」

バツが悪そうにうつむいて、美鈴はゆっくりわたしたちの前を歩いていく。

「おまえもさぁ」

慎太郎の低い声にビクッと肩を震わせて、美鈴は足を止めた。

「あいつのダチだって言うなら、まちがったことをしようとしてるあいつを止めるべきだったんじゃねーの? 少なくとも俺は、それが真の友情だと思ってる。ま、おまえが友情をどう捉えてるかは知らないけどな」

「……っ」

美鈴は言葉を詰まらせ、さらに小さくなってしまった。

わずかに見える横顔は青ざめている。

まっすぐな慎太郎の言葉は、わたしの胸にも深く突き刺さった。


「美鈴! 行くよ!」
「う……うんっ」

そう言って美鈴は一度もわたしたちを見ることなく駆け足で去っていった。