もしも明日があるのなら、君に好きだと伝えたかった。

「だから、取り返しがつかなくなる前にやめよう?」

「あたしの場合は、相手があたしの思い通りに行動してくれることが友情の証なの。たとえ大多数がちがうって言っても、あたしの場合はそうなの。あんたの理想を押しつけられて、すっごいムカつくんですけど。っていうか、美鈴はもちろんあたし寄りの考えだよね?」

「え……?」

「友達は利用するものだって思ってるよね? 現に美鈴も、さんざんあたしの地位を利用してきたんだしさ」

「ゆ、り……? なに、言ってんの、利用なんて……あたしは優里のこと、友達だって……」

「あはは、なにショック受けてんの。美鈴はあたしのおかげでクラスの上位にいられるんだよ? それをわかっててあたしと仲良くしてるんでしょ? バレバレだっつーの」

「ち、ちがっ……」

「なに焦ってんの? べつにそれがダメだなんて言ってないよ? 利用してこそ、友達の価値があるんだしさ。それなら、思いっきり利用すればいいよ、あたしのこと。その代わり、あたしもあんたを利用する。あたしに近づいて来る奴は、みーんなそんな人ばっかだし。それが友情でしょ?」

優里にはいくら言っても通じない。友達は利用するものだなんて……。

「だから、さっさとそれ、どうにかしてよ。グズグズしてると、あたしもう帰るからね」

美鈴の持つ瓶を顎で指す優里。冷たいその瞳には悪意しか感じない。

「あ……ま、待って。わかった、わかったから」

美鈴は手にした瓶の蓋に手をかける。

ど、どうしよう。これは、ちょっと……いや、かなりまずいかも。

話し合いでどうにかなる相手じゃないことはわかっていたけど、どうにかなってほしかった。

過去では瓶の中身はただの水だったけど、実際にどうなのかはわからない。

もし中身が本物の硝酸だったら……ただの怪我では済まないかもしれない。

そう考えると恐怖でしかない。逃げるなら、今だ。今しかない。

だけど思った以上に足に力が入らなくて、この場から動くことができない。

逃げなきゃ、いけないのに。