だけど答えは出ないまま、気づくと午後最後の授業が終わろうとしていた。
まだ菜月に声をかけることができていない。
もう時間がない。
だから余計に焦る。
だけどいったい、わたしはなにに焦っているというの?
言う通りにしないと優里の機嫌を損ねるから?
菜月みたいな目に遭いたくないから?
言われたことを遂行することで、気楽になりたいから?
結局全部、自分の保身だ。
自分の身を守るために優里と美鈴の顔色をうかがって、仲のいいふりをしてきた。
だけど、そうすることにいったいなんの意味があるんだろう。
わたしはいったい、なにを守ろうとしてきたんだろう。
どうしたかったんだろう。
それがわからなくなってしまった。
いっそのこと、このまま声をかけずにいようか。
怒り狂う優里と、それを助長するようにわたしを責める美鈴の姿が目に浮かぶ。
だけどそれもいいかもしれない。
いろいろ考えることにも疲れたし、これ以上そんなことで悩みたくない。
ふたりの機嫌をうかがいながら過ごす毎日に、ピリオドを打つのもいいかもしれない。
そう考えたら胸の中にくすぶっていたたくさんのモヤモヤが、少しだけ軽くなったような気がした。



