もしも明日があるのなら、君に好きだと伝えたかった。


「ごちそうさま、いってきます」

カバンを持って逃げるように家を出る。

朝食はほとんど食べられなかった。

食欲もなかったし、ちょうどよかった。

自転車を漕いで学校までは十五分ほどの距離。

交通量の多い国道沿いの平坦な道をひたすらまっすぐに行くとたどり着く。

時間帯によっては信号に引っかかる率が高くて二十分ぐらいかかる時もある。

もうすっかり通い慣れた道。周りには背の高いビルや建物がたくさんあり、飲食店や居酒屋が建ち並んでいる。

交差点に差し掛かり、十字に道が拓けた。

目の前の信号が赤に変わると、わたしはブレーキをかけて自転車を停止させた。

見晴らしのいい交差点で歩行者もポツポツいるけど、ここから駅までは徒歩だと時間がかかるので、この辺に住む人はバスか車での送り迎えで駅まで移動する。

住むにはいいけど、車がないと不便な立地。

だけど地域性や治安がよくて、安心して子どもを育てられる町ランキング一位に輝いたこともある。

しみじみと辺りを見回す。

国道沿いにところどころに植えてある木からは、元気な蝉の鳴き声が聞こえてくる。

わたしはこの交差点で交通事故に遭った。

そして、死んだのだ。

それはこの先絶対に変えてはいけない運命。

こうやって自転車に乗りながらこの道を通るのも、あと何回ぐらいなんだろう。

やめやめ、そんなことを考えても意味がないよ。

頭に浮かんだことを振り払うように再びペダルを漕ぐ。

学校まではもうすぐだ。

近づいていくたびに気分がどんより沈んでいく。

できればこのまま逃げ出してしまいたい。

それでもそうできないのが意気地なしのわたしなのだ。

学校の駐輪場に着くと、柱にもたれるようにして誰かが立っていた。

それは背の高い男子で、うつむきながらスマホを触っている。もしかして……。

そう思ったのと同時に、わたしの気配に気づいたその人が顔を上げた。

──キキィ

ビックリして思わずブレーキをかけてしまった。目の前には、気まずそうな表情を浮かべる慎太郎の姿。