もしも明日があるのなら、君に好きだと伝えたかった。


『はぁはぁ……』

──ガラッ

勢いよくドアを開けると、部屋の中はカーテンが敷かれていて薄暗かった。

目を凝らして見ると人の気配がある。

『あんたさぁ、マジで調子に乗りすぎだから』
『ほんっと、うざいんだけどっ』

恐る恐る足を踏み入れると、ふたりに壁際に追いつめられた菜月が、小さく震えているのが見えた。

『あ、琉羽! 遅かったじゃーん。なにやってたの?』
『ほーんと、待ってたんだよぉ?』

わたしの気配に気づいたふたりが振り返る。

ふたりは今までに見たことがないほどの不気味な作り笑いを浮かべていた。

口元は笑ってるけど、目が全然笑ってない。なんだか、ちょっと怖いんだけど。

『琉羽は、あたしたちの友達だよね?』
『え……』

優里がなんの前触れもなく、そんなことを言った。

ここはどう答えるべきなんだろう。

返答をまちがえると、優里の機嫌を損なってしまうかもしれない。

『う、うん、もちろんだよ……』
『あははっ、だよねぇ?』

正解、だった?

『だったらさぁ、これで菜月のこと成敗してやってよ』

優里がスカートのポケットの中から小さな茶色い瓶を取り出した。

瓶のラベルには化学薬品である硝酸と書かれたラベルが貼ってある。

『え……なに、これ』
『だからぁ、菜月にこれをかけろって言ってんの。今、あたしたちは友達だって言ったよね? 友達のお願いを聞くのは、当然のことでしょ?』

物わかりの悪いわたしに、若干イライラしている優里。

なに、それ。なんで……わたしがそんなこと。

『厶、ムリだよ、できないよ……っ』

ひくひくと頬が引きつる。これは夢だ。悪い夢なんだ。早く醒めて。頭の中がパニックで、そんな現実逃避をしなきゃやってられない。

『は? 友達を裏切るつもり?』
『……っ』
『早くやれよ』
『そうだよ、ちんたらしてんじゃないって』

優里に無理やり瓶を握らされる。わたしの手はカタカタとありえないほど震えていた。

どうして?

なんでわたしがこんなこと……っ。

うまく息が吸えなくて、苦しい。

目の前の菜月は、怯えきった目でわたしを見て震えている。

胃が、心臓が、なにかに押しつぶされそうなほどに痛む。