もしも明日があるのなら、君に好きだと伝えたかった。


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──過去。

ある日の放課後。

夏休みが五日後に迫った暑い日のことだった。

オレンジ色に染まる教室に、わたしはいた。

優里と美鈴に呼び止められたのだ。

『琉羽、あんた明日の放課後菜月を化学実験室に呼び出してよね。わかった?』
『え、なんでわたしが……?』
『優里がそう言ってんだから、あんたは言われた通りにやればいいの』
『そうそう。あたしが言うことに文句は言わせないよ。あたしが言ったらやるの。いい?』
『で、でも、呼び出して、どうするの……?』
『ちょっと痛い目に遭ってもらうだけだよ。あたしがやることに文句でもあんの?』
『ち、ちがうよ、あるわけないじゃん』
『しくじったら、許さないよ。ちゃんと呼び出してよね』

そ、そんな。

でもここで断る勇気がわたしにはない。

言われた通りにやればいいんだ。

そしたら、わたしはずっと安全な場所にいられる。菜月のようにターゲットにされることもない。

次の日、わたしは帰り仕度をしている菜月の背中に声をかけた。

『な、菜月。話があるの。ここじゃ言えないから、あとで化学実験室に来てくれないかな?』
『え……?』

菜月はきっと、おかしいと思ったにちがいない。

この時のわたしは自分でもわかるくらい緊張していた。

声だって震えていたかもしれない。

そんなわたしを見て、菜月は静かに口を開いた。

『……わかった』
『じゃ、じゃあ、待ってるからっ』