「よっと。ほら、しっかり掴まってろよ」
え…?
次の瞬間、身体がフワッと宙に浮いた。
えっ?いったい、どうなってるの……?
「ちょ、ちょっと……」
「フラフラなくせに、無理しなくていいから」
「しん、たろう……っ」
「んだよ、ったく」
「あ、いや……ううん、なんでも、ない……けどっ」
下がってくるまぶたに抗えなくて、そっと目を閉じる。
慎太郎の腕の中は驚くほど温かくて、優しくて。
今だけは嫌われているという事実が、嘘のように思えた。
でもね、慎太郎。
わたしは、あんたに優しくされる資格のない人間なんだよ。だって……わたしは。わた、しは。あー……ダメだ。意識が遠のいていく。



