『井川くんと付き合ってるの?』
わたしと慎太郎が仲良く話すところを見ていたクラスの女子が、そんなことを聞いてきた。
『や、やだ! まさか! ありえないよ!』
だってわたしと慎太郎じゃ、あまりにも住む世界がちがいすぎる。
慎太郎の世界を壊しちゃいけない。わたしが踏み入ってはいけない。慎太郎は雲の上のような人。わたしなんかとは対等じゃないの。
『でも、仲いいよね? 友達なの?』
『そんな……友達だなんて! そんなふうに思ったことは、一度もないよ』
いつだって慎太郎はわたしの救世主で、カッコいい存在だった。友達と呼ぶなんておこがましい。図々しい。だから全力で否定した。



