『行けー、佐上ー!』
『頑張れー!』
バトンを受け取って全力で手足を動かした。
走り出したら、周りの声はなにも聞こえなくなった。
ただ風を切る音と、客席の景色が一瞬で過ぎていく。
順位は三位。このままのペースで走り続けたら、二位の人を抜けるかもしれない。
前の人の背中がすぐそこにあり、手を伸ばした先に触れそうな距離まできた時だった。
『あっ』
──ドサッ
自分の足につまづいて、思いっきり前のめりに転んでしまった。
転ぶ時に防御反応で思わず両手が出てしまい、顔面を派手に地面に打ちつけた。鼻先と膝がジンジンする。
『あっちゃー! なにやってんだよー!』
『せっかく追い抜けると思ったのにー!』
『佐上、立ち上がれー』
地面にひれ伏すわたしの耳に、色んな声が聞こえてくる。
恥ずかしくて、痛くて、消えてしまいたい。
どうしてわたしは、いつもいつも……肝心なところでダメなんだろう。
もうやだ、帰りたいよ。嫌だよ。逃げたい。
やっぱりわたしはなにをやってもダメなんだ……。
ジワジワと涙が浮かんだ。
かっこ悪くて、立ち上がることも、顔を上げることもできない。
その間にも後続の人に追い抜かれて、ビリ確定。
もう少しだったのに……。



