もしも明日があるのなら、君に好きだと伝えたかった。

『え?』

なに言ってるの、そんな小さな身体で。わたしよりも細いくせに。

ツラいのを忘れて、思わずポカンとしてしまう。

『心配すんなって。俺、これでも強いんだからなっ』

慎太郎は照れたように鼻をかいて、恥ずかしげに、でも自信たっぷりに笑って見せた。

強い……?慎太郎が?頼りなくて細い肩、女の子みたいな笑顔。

慎太郎はわたしの力で軽く押しただけで、倒れちゃいそうなほど弱く見えるんだけど。

『えー、ほんと?』

なんだかクスクス笑ってしまう。

『ほんとだって! 俺が守ってやるからルウは安心して学校に来い』
『なんでわたしの名前知ってるの?』
『さっき言ってたじゃん、ルウだって』
『そうだけどさ……あはは、ありがとう、シンタロー』
『おう!』

今日初めて話した慎太郎と名前で呼び合うようになった。

次の日の朝、宣言通り慎太郎は小さな身体でジャイアンに挑んだ。ふたりは互角に戦っている。

ボロボロになりながら、最後には根負けしたジャイアンが泣きだして試合終了。

ふたりとも泥だらけだった。

『二度とルウに手を出さないって約束しろ。それと、ちゃんと謝れ』
『ご、ごめんっ……なさいっ』

ジャイアンは泣きながらわたしに謝ってくれて、わたしは迷わずにそれを受け入れた。

慎太郎がわたしのためにここまでしてくれたという事実だけで、もう十分だった。

わたしは慎太郎に駆け寄り、泣きながら泥だらけの彼に抱きついた。

『泣き虫だな、ルウは』
『だ、だっで……っ』
ここまでしてくれるとは思ってなかったんだ。本気で怒ってくれると思わなかったんだ。

『これでもう、学校に行きたくないなんて言わないよな?』
『うん!』
『ははっ、よかった』

そう言って優しく頭を撫でてくれた慎太郎。

どうしてわたしにそこまでしてくれるのかはわからなかったけど、彼の気持ちが嬉しかった。

その瞬間、わたしの中で慎太郎に対する気持ちが変わったんだ。

弱々しい小さな背中が、頼りがいのある大きな背中に見えた。

正義感が強くてまっすぐで、ヒーローみたいに突然現れた慎太郎に救われたの。

そのあと全員こっぴどく先生に叱られたのは言うまでもない。