『バカー……ジャイ、アンのバカー……っ。うっ、ひっく』
『ジャイアン? ああ、小野田(おのだ)くんのこと?』
『そう、だよ……っ。意地悪だから、ジャイアン……』
すぐに折れそうだと思っていた慎太郎の手は、意外にも力強くてしっかりしている。
その手の温もりに、なぜだかとても安心させられた。
慎太郎は近くの公園の水道でハンカチを湿らせ、わたしの膝についた小石や血を拭ってくれた。
『いたっ』
『わー、ごめん。でも、ちょっと我慢して』
『うん……ありがとう』
必死に歯を食いしばって痛みに耐えた。
慎太郎は血で汚れたハンカチを洗っては、わたしの膝にそれを当てた。
何度も繰り返しているうちに、やがて血は止まって痛みも引いてくる。その頃には涙も止まって、落ち着きを取り戻していた。
『明日から嫌だな。学校、行きたくないよ』
明日からもわたしはジャイアンに嫌がらせをされるんだ。きっとそれは変わらない。
無意識に慎太郎の服の裾をギュッと握っていた。
『大丈夫だよ。なんかあったら、俺が守ってやるから』



