当時、わたしはクラスのボスの男子に目をつけられていた。
その原因は、わたしがドッジボールでジャイアンにボールを当ててしまったから。
よっぽど悔しかったのか、それ以来なにかにつけて文句を言われたり、こうやって後ろから押されたりする。
悔しい、ものすごく。
『大丈夫?』
『え?』
真夏の暑い日、学校帰りの通学路で、いつの間にか太陽を背にした慎太郎が目の前に立っていた。
まん丸に見開いた目が心配そうに揺れている。
『だ、大丈夫! だから、あっち行って』
涙を浮かべているところを見られたくなくてそっぽを向いた。
慎太郎は身体が小さくて、さらにはわたしよりも細くて、その上声も高くて、女の子みたいにかわいくて、押すとすぐに折れてしまいそうなほど弱々しい男の子。
そんな子に泣き顔を見られたくなかった。
立ち上がって走ろうとすると、膝に痛みが走った。
『血が出てる。痛い?』
『うっ……ううっ。うわーん』
膝がズキズキして痛かったのと、流れ出ている血を見たら強がっていた緊張の糸が一気に切れた。
人目もはばからずに大声をあげて泣くわたし。
『大丈夫、大丈夫だから。ほら、こっち来て』
細くて小さい慎太郎の手が、わたしの手をギュッと包み込んだ。



