わたしは夢を見ているの?
そんなことを考えていると、突然辺りいったいがパアッと明るい光に包まれた。
下のほうからじわじわと温もりが感じられて、実体はないけれど、わたしの身体を優しく包み込んでくれているかのように感じる。
ああ、とても安心する。
わたしはやっぱり、死んだんだ。
天国なんて信じていたわけじゃないけど、でももし本当にあるのなら、そこへ行きたい。
そこへ行ったあとにどうなるのかなんて、わからないけれど。
『いいのかい? それで』
その時、頭上から声がした。
え?
『だ、誰?』
とっさにそう言ってみたけれど、声として聞こえることはなかった。
だけど、そんなことは関係なかったらしい。声の主が続ける。
『おまえさんには、未練はないのかい?』
諭すような優しい声。老人のようにしゃがれていて、でもどこか温かみのある声だった。
未練?
そもそもあなたは誰なのかという疑問は置いといて、ただ純粋に聞かれたことを考えてみる。
だけどその答えはおどろくほど簡単に出た。
『そんなの、あるわけないよ』
声にならない声が出る。声として認知されないとわかっていても、はっきりと言っておきたかった。
そうだよ、未練なんてない。
わたしはずっと、この世から消えてしまいたかった。わたしなんて、消えてなくなればいいと思っていた。
『だいたいね、未練があったら天国に行きたいなんて思わないから。生きてたっていいこともないし、わたしなんていなくなったほうがいいんだよ』
そうだよ、わたしなんて……。