どうしてあんなところにあるの。
台かなにかに乗らなきゃ、取れそうにない。
それにこれから塾に行かなきゃいけないから、グズグズしている時間もない。
どうしても読みたかったので、わたしは意を決した。
「あ、あの……! すみません」
おどおどしたわたしの声。緊張から手が震えた。先輩たちは一斉に顔を上げてわたしを見る。
「お、一年生? かわいいじゃん」
「こんな子いたんだー? 俺、優里ちゃんしか知らねーわ」
マジマジと見定められ、居心地が悪いったらない。ここは早く立ち去るのみ。
「ほ、本を取りたいので、後ろいいですか?」
本棚を指差しながら、はっきりと伝える。
すると先輩たちはお互いに顔を見合わせて、なぜか怪しげに笑った。
「悪いな、気がつかなくて」
「ほらほら、どうぞどうぞ」
先輩たちはササッと退いてくれた。
な、なんだろう?この違和感は。
素直によけてくれたのはいいけど、なんだかちょっと、あっさりしすぎているような……それに、ニヤニヤしていて気持ち悪い。
なにか企んでいるような気がするんだけど。
疑問に思いながらも、時間が迫っていたこともあってそばにあった木の台を持ち上げた。
そして移動させ、足をかける。
「お、やっべー。くるか?」
「ははっ、俺は赤とみた」
「いや、ピンクだな」
「意外と白かもよ」
先輩たちのヒソヒソ声がなんだか嫌な感じに聞こえるのは、気のせいかな。