もしも明日があるのなら、君に好きだと伝えたかった。


「ねぇねぇ、そういえば、安井が優里のこと好きだって言ってたよ」
「えー、やめてよ、あんなキモオタ! ありえないからー」
「だよねー、優里にはもっと爽やかなイケメンが似合ってるよ。井川くんみたいな」
「あー、井川くんね。たしかに、イケメンだよね。でも、あたしはもうちょっと不良っぽい人がいいんだぁ。井川くんをもうちょっと悪くしたような」
「あはは、不良っぽい人って!そういやさぁ、ミサの奴、ブスのくせに人の男に手ぇ出して修羅場だったらしいよ」

優里や美鈴といても、話題は常に男女のことか自慢話ばかり。

こうやってわたしが知らない名前が出てくることも、しょっちゅうだ。

こういう時、わたしはただ黙って相槌を打っている。これがわたしのポジション。ふたりも特に、そんなわたしになにも言わない。

ううん、それ以上を望んでいないと言ったほうが正しい。

「修羅場って、ミサが? 笑えるー!」
「似合わないよねぇ」

優里や美鈴との会話は、今までこんなにつまらなかったっけ?

過去のわたしはふたりに合わせるのに必死で、会話の内容を理解してないのに同調して笑っていたような気がする。

さすがに二度目ともなると余裕が出てきたのか、会話の内容がしっかりと頭に入ってくる。

こんなにくだらない話に共感するフリをして笑ってたのか。

そう考えたら、なんだかバカバカしくなった。

一緒にいても疲れるだけだし、常に優里の顔色をうかがってお膳立てをしなきゃいけない。

くだらなくて、窮屈な毎日。

唯一菜月としゃべってる時だけが、気を遣わなくて楽しい時間だったかもしれない。

不思議。今までそんなこと思わなかったのに。