「優里ってほんとオシャレだよね。さすがって感じ」
「えー、そんなことないよぉ」
「優里ママとパパのツブヤイターもフォローしてるよ。ほんとすごいよねぇ」
「あたしもあたしも! フォローしてるー! 最新のトレンドがわかるし、コーデも載せてくれるから参考にすることが多いよ」
ヘアアレンジやメイクまで、美鈴は色んなことに関して優里のことを褒めちぎる。
優里も悪い気はしないみたいで、嬉しそうだ。
そこへ周りの女子も集まってきて、美鈴の言葉に同意する。優里は完璧にこのクラスのリーダーだ。
クラス中の女子が優里の圧力に負けて、みんな手のひらを返したように菜月に対する態度を変えた。
このクラスでは、菜月の存在はないものになっている。
小さくなっている菜月の後ろ姿に目を当てられない。
ただ話していても面白くないからというだけで……ここまでできちゃうんだ。
キリキリと胃が痛い。
どうしてこんなことをして平然と笑っていられるの?
わたしには無理だ。偽善者ぶってるつもりもなければ、いい子でいたいわけでもない。
黙って見ているだけのわたしも、加害者なんだから。
最低だ、わたしは。
そんなことはわかってる。
でも今ここで、菜月に手を差し伸べる勇気はない。
そんなことしたら、今の菜月の状況が明日は我が身だもん。
そんな危険をおかしてまで、わたしは……わたしは……。
見ないようにしていれば、考えないようにすれば、やり過ごせる。
結局人は、自分が一番かわいい生き物なんだ。だから、これでいい。これで……いいの。



