「優里のお父さんとお母さん、今はイギリスにいるんだっけ? すごいよねー、世界を飛び回ってるなんて」
「えー、そんなことないよー。普通だって」

美鈴の言葉にまんざらでもない様子の優里。

「そんなことあるよ! ねぇ、すごいよね?」

美鈴はわたしたちに同意を求めた。すかさず、わたしは「すごいすごい!」と笑顔を貼りつける。

こうして共感して笑っていれば、すべてがうまくいく。菜月も同じようにうんうんと頷いていた。

美鈴は肩先までの黒髪のボブで、腫れぼったい一重まぶたが印象的な女の子。

身長はわたしと同じくらいで、この中だと優里が一番背が高く、その次に菜月、わたしと美鈴といった順番。美鈴と優里は中学からの仲で、二人は常に一緒にいる。

体育の授業でペアを組む時も、自然とわたしと菜月、優里と美鈴にわかれるんだ。

席が近いこともあって、なんとなく四人で一緒にいるようになった。そして、なんとなく今日まで一緒にやってきた。今のこの環境に、特になんの不満もない。

ただぼんやり話を聞いて共感するフリをし、時々相槌を打ったり、笑顔でさえいれば、たいていのことはうまくいく。

そしてそれは、これから先も変わらない……はずだった。