だから──。

バイバイ、慎太郎。
バイバイ、菜月。

ごめんね、お父さん、お母さん、お兄ちゃん。

さようなら、また会える日まで。


『……い! おい!』

遠のいていく意識の中で、呼び止める声がする。

やけにはっきりとした、それでいて力強い声。

『死ぬなっ! 死ぬんじゃねーよ!』

誰、だろう……。

もうろうとする中で、はっきりとはしないけれど。

『死ぬなって! 頼むからっ!』

その声はわたしの中にスッと入り込んできて、覚醒させようとしてくる。

『俺、まだ、なんも伝えてねーよ……それなのに、このまま死ぬんじゃねー……』

な、に、言ってるの、さっきから。

誰の声だろう。これは……そうだ、慎太郎の声に似てる。

でも、そんなはずはない。

ここにいるわけないんだから。


『頼むよ、目を覚ませ。死ぬんじゃ……ねぇ……』


やめてよ、そんな切実な声を出さないで。

わたしだって、本当は死にたくなんかない。

慎太郎のことが好きなんだ。

ずっと隣にいたかった。

もしも明日があるのなら、きみに好きだと伝えたかった──。