交差点の真ん中では、茶色と白のまだら模様の猫がのんびりと毛づくろいをしていた。
目の前に迫るトラックなんて、見えていないというように。
慎太郎は以前のわたしと同じように、猫を助けようとそこへ飛び出したのだ。
ダメだよ、こんなの。
なんで慎太郎なの。
なりふりなんて構ってられない。
「慎太郎! 危ないっ!」
迷わず交差点に飛び出し、慎太郎の腕を掴んだ。
わたしの声に驚いた猫はサッと身を翻し、反対側へ走って逃げていく。
慎太郎の腕を強く引いた瞬間、トラックはすぐそこまで迫っていて。
だけど、よ、よかった。
ギリギリ、間に合っ──
──ドンッ
後ろから思いっきり誰かに背中を押されたような気がした。
引き戻されかけたわたしの身体が、トラックの前へと押し出される。
視界の端に映る美鈴の姿。美鈴はトラックの前に押し出されたわたしを見て、小さく笑っていた。
「琉羽……っ!!!」
ダ、ダメだ……もう間に合わない。
ひかれる。とうとう、最後の瞬間がやってきたんだ。
覚悟を決めてギュッと目を閉じた。
──キキキキキキィ
ブレーキ音が辺りに響いて、迫りくる衝撃に耐えようとする。
だけど──
──グイッ
誰かに腕を掴まれて、思いっきり乱暴に引き寄せられた。
「言っただろ、なにがあっても守るって……」
耳元で小さく囁く声。
目を開けた瞬間、わたしの代わりにトラックの前へと飛び出す慎太郎の姿が映った。
ドンッと大きな音がして、目の前に信じられない光景が広がる。



