「あたしだよ……優里」
「み、美鈴……? ウソでしょ、なんで……っ」
優里はあまりの美鈴の変貌ぶりに、驚きを隠せない様子で手で口元を覆う。
周りの人たちも、目の前の人が美鈴だと知って戸惑いを隠せていない。
「あたし、ずーっと考えてたの。こうなったのは、誰のせいなのかなって」
口元に気味の悪い微笑みを浮かべた美鈴が、一歩ずつ優里に近づく。
その目はまったく笑ってなくて、すごく不気味。
「い、いやっ、来ないでっ……」
恐怖に顔を引きつらせた優里が、ドサッとその場にしゃがみ込む。
「来ないでってば……っ!」
「あたし、わかっちゃったんだ。悪いのは──ぜーんぶ、優里なんだってことが!!!」
美鈴は手にしていたカッターを優里目がけて振り上げた。
「い、いやぁぁ!」
「ローファーをズタズタにしただけじゃ気が済まなかったから、今度はあんたの番だよ?」
「や、やめてっ! お願いだよっ! あたしたち、友達でしょ?」
「友達? それ、本気で言ってる? 利用するものでしかないって言ったのは、優里だよね?」
「あ、あ……」
ガタガタと全身を震わせて、恐怖に怯える優里。
「おい、マジでヤバくね?」
「だ、誰か助けてあげてよ」
「やだよ、こえーもん」
わたしはゆっくり美鈴に近づいた。
「美鈴、やめて」
鋭い眼光がわたしを捉える。
「はっ、またあんた? よく言うよ、あんただって優里には散々嫌なことされたでしょ? 巻き込まれたくなかったら、あっち行ってろっつーの」
「そ、そうだけど、こんなの……よくないでしょ」
「うるさいっ! あたしはねー、優里のことだけは許せないのっ。ずっと親友だと思ってたのに、その気持ちを踏みにじったんだよ、こいつは!」
美鈴の手にグッと力が入ったのがわかった。
もしかすると、わたしが余計に刺激してしまったのかもしれない。