「じゃあ、俺、行くわ。おまえも早く教室行けよ」

焦る様子もなく、静かに立ち去ろうとする慎太郎の背中に胸の奥がキューッと疼く。

これが最後なんて……嫌だよ。

「し、慎太郎……っ!」

わたしの声に立ち止まった背中がビクッと揺れた。

そしてゆっくりと振り返る。

「なんだよ?」

少しスネたような、それでいて困ったような顔つき。

「あ、あのね……っ!」

呼び止めておいて、なにを言うかなんて考えてない。

ただこのままでいるのが嫌だっただけだ。

最後に慎太郎に伝えたいことはなんだろう。

「わたし、慎太郎の強さにずっと憧れてた! 慎太郎みたいに強くなりたいって、いつも思ってたんだ!」

君に出逢えてよかったと、今なら胸を張って言える。

だからわたしは、最後に感謝の気持ちを伝えたい。

「今まで……たくさん助けてくれてありがとう……っ!」

慎太郎のことは、ずっとずっと、これから先も絶対に忘れないよ。

精いっぱいの感謝を込めて、わたしは満面の笑みを浮かべた。

「そんな慎太郎のことが……友達として大好きだったよ! ほんとに、ありがとう!」

隣にいることはできないけれど、そうできたらどんなに幸せだったかな。

もしもわたしに明日があったなら、迷わず伝えるのにね。