もしも明日があるのなら、君に好きだと伝えたかった。


でもそれはただの思い過ごしだった。見た目が派手になったからといって、見えてる世界はなにも変わらなかった。そう、なにも。

「琉羽? 帰ってるの?」

階下からお母さんの怪訝な声がした。スリッパの音がだんだんと近づいてくる。わたしはとっさに部屋の隅に身を寄せ、キュッと縮こまる。

──コンコン

「琉羽、いるの?」

思わずドキリとしてしまう。

わたし、またなにかしちゃったのかな。

お母さんの声色が、不機嫌そうだ。ヒヤリと胸に冷たい空気が流れこみ、空気が一瞬にして凍った。

──ガチャ

わたしが返事をする前に勢いよくドアが開いた。案の定、そこには真顔のお母さんがいた。眉を吊り上げて、怒っているような表情。

まちがいない、わたしがなにかをやらかしたんだ。
「今日は塾のはずでしょ?」
「え……あ」

そういえば、忘れてた。というよりも、塾どころじゃなかった。

はぁと呆れるように大きなため息を吐くお母さん。
「サボッたのね? まったく、あなたって子は」

落胆の声。もうとっくに失望させてしまっているだろうけれど、それ以上にまたガッカリさせてしまったことがわかる。

「ご、ごめん、なさい……」

床に視線を落としながら、小さな声しか出ない。

本当はちがうのに、お母さんを前にすると、いつも息苦しくて、呼吸がうまくできない。

胸が詰まって、言葉が出てこないんだ。