「やっべ、遅れる!」
「ったく、おまえのせいだかんな?」
「わーるかったって! 今度ジュース奢るから許せよなっ」
「とにかく、足動かせっ! 遅刻する」
後ろからバタバタと駆け抜けて行く男子たち。
朝練後なのか、みんなスポーツバックを抱えている。
その中でもひとりだけ見覚えのある後ろ姿が目に入った。
思わず足を止めたわたしは、その場に立ち尽くす。
すると、その中のひとりが勢いよく振り返った。
目が合って、ドキリとする。
「おい、慎太郎! 早くしろよっ」
「わりー、先行ってろ!」
「は? なんでだよ?」
「いいから!」
「わかったよ」
慎太郎以外の男子たちは、全速力で駆け抜けて行った。
すぐに姿が見えなくなり、辺りにへんな緊張感が漂う。
「遅刻か?」
「え、あ……まぁ、そんなとこ」
うまく答えられたかな。
「琉羽にしては、珍しいじゃん」
「そう?」
久しぶりに顔を合わせたからなのか、恥ずかしくて目を見られない。
どんな顔をすればいいのかも、わからない。
ねぇ、慎太郎……。
わたし、今日、死ぬんだよ。
会話が途切れたところでチャイムが鳴った。
わたしたちは微動だにせず、その場に立ち尽くす。