あと二日、あと一日、そして、とうとう、明日になった。

夜になると恐怖が襲ってきて、泣きたくもないのに涙が出てくる始末。

なかなか寝つけなくて暗闇の中でぼんやりする。

喉が渇いてリビングに行くと、ちょうどお父さんが仕事から帰ってきたところだった。

「まだ起きてたのか?」
「うん、おかえりなさい」
「もう遅いから、早く寝なさい」
「うん……喉が渇いただけだから。飲んだらすぐ寝る」

お父さんは疲れ切ったような顔をしているけど、わたしがそう言うとフッと口元をゆるめた。

「最近は、どうだ?」
「え、なにが?」
「あ、いや、その、母さんとはうまくやってるのか?」

しどろもどろになりながらお父さんが聞いてくる。

「うん、まぁ、ぼちぼちかな……」
「そうか、なにかあるなら遠慮なく言いなさい。お、お小遣いがほしい時も、頼ってくれていいんだぞ」

恥ずかしそうに言うお父さんに、思わず笑ってしまった。

「ありがとう……お父さん。今まで、本当にごめんね……っ」
「なんだ、妙にかしこまって。子どもは親に遠慮なんかしなくていいんだ」
「うん……」

明日でお別れなのかと思うと、自然と涙があふれてきた。

もっともっと、色んなことを話したかった。

どうしてわたしは、いつもいつも……最後の最後にならなきゃ、大切なことに気づけないんだろう。

もっと早くに歩み寄ろうとしていたら、本音でぶつかっていたら、なにかがちがっていたかもしれないのに。

もしかしたら、死ぬことだってなかったのかもしれない。

「も、もう寝るね。おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」

涙が落ちそうになって、慌ててリビングを出て部屋に戻った。

枕に顔を埋めて、声を殺して泣いた。

どれだけ泣いても涙が枯れることはなくて、朝方、気づくとわたしは眠りに落ちていた。