『今日の夜、家の近くの公園で待ってるね』

家へ帰ったあと、わたしは慎太郎にメッセージを送った。

メッセージを送るのは初めてで、告白の返事だってわかるよね、

きっと。だけどわたしの心に迷いはない。

なんだか緊張してしまい、ご飯が喉を通らなかった。

「ちょっと出かけてくるね!」
「あら、こんな時間から?」

お母さんが怪訝に眉を寄せる。

そりゃそうだ、夜だもん。

認めてくれるほうがおかしい。でも……。

「お母さん、お願い! 大事な用事なの! どうしても行かなきゃいけないの……!」

顔の前で両手を合わせて頭を下げた。

思えばお母さん相手に、こんなふうに必死になったことはないかもしれない。

しばらく沈黙が続いたあと、観念したようにため息を吐いたお母さん。

「琉羽がこんなワガママを言うのは初めてね。今まで……それほど我慢させちゃってたってことか」
「え?」

お母さんの目にはうっすらと涙が滲んでいた。

「ごめんなさいね……」
「……っ」

やめてよ、涙が出そうになる。

「遅くても二十一時までには帰って来るのよ? いいわね?」
「うん……わかった! ありがとう、お母さん!」

わたしは家を飛び出した。

そして公園に向かって駆け出す。

慎太郎のランニング中に出逢った公園に着くと、ベンチのそばに人の気配があった。

街灯で照らされた姿は、紛れもなく慎太郎のものだ。

ど、どうしよう。

いざとなったらめちゃくちゃ緊張する。

ザッザッと足音を立てながら近づいて行くと、慎太郎がわたしの気配に気づいて駆け寄ってきた。

「よっ」
「あ、うん」

どことなくぎこちない慎太郎の笑顔からは、緊張感が伝わってくる。

対してわたしも、落ち着かなくてそわそわする。

でも、言わなきゃ。

「急に呼び出してごめんね。予定とか、なかった?」
「琉羽からの誘いなら、予定があっても空けるし」
「……っ」

月明かりに照らされた慎太郎の表情はとても真剣で、そのまっすぐな目を見ていたら本音が漏れてしまいそうになる。

一緒にいると胸が熱くなって、このまま……ずっと一緒にいたいって……そんな気持ちが胸の奥からあふれ出す。

「あ、あのね、告白の返事なんだけど……」
「……うん」

緊張から手が震えた。

よく見ると慎太郎も硬く拳を握っている。