「俺が漕いでやるから、琉羽は後ろな」
「え?」
慎太郎はよこせと言わんばかりにわたしを自転車から下ろすと、サドルに跨った。
そして、わたしに向かって顎で乗れよと指す。
「え、えー?」
乗るの?
本気でいってる?
なんだか……すごく恥ずかしいんだけど。
「早く、青になったぞ」
観念したわたしは、跨るのもどうかと思って、横向きに座る。そしてサドルを掴んだ。
「バカ、こういう時はここだろ」
慎太郎の手がわたしの手を握り、腰へと持っていく。
「な、なにすんの」
「うっせー、しっかり両手で持てよな」
そ、そんなの、無理に決まってる。
恥ずかしくて、どうにかなっちゃいそうだもん。
「危ないだろ?」
「……っ」
おずおずと反対の手で慎太郎の腰を掴んだ。
慎太郎は小さく笑ってから、勢いよくペダルを漕ぎ出した。
「きゃあ」
あまりのスピードに腕に力が入る。
慎太郎の背中は広くて、大きくて、そして温かい。
おでこを当てて腰をギュッと握っていると「はは、やっべ」と小さな声が。
やっべって、なにが?
不思議に思って顔を上げると、少し照れたような横顔が見えた。
「そんなことされたら、かわいすぎてヤバいから」
「えっ……」
「すっげー……ドキドキする」
な、なに、言ってんの。
困るよ、そんなこと言われたら。
恥ずかしくて、黙り込む。
ハンドルを握る慎太郎の手が、小さく震えていることに気がついた。
ほんのり赤く染まる頬。ぎこちない笑顔。
そのどれもに胸が締めつけられる。
それと同時に、湧き上がる想い。
もう隠しきれないよ……慎太郎のことが好きだってこと。