恋愛小説のコーナーに足を運んでみたものの、純粋に本選びを楽しめる心境ではなくなってしまい、わたしたちはどちらからともなく帰路につく。

時刻は夕方五時を少し回ったところ。

門限がある菜月と駅で別れ、わたしは自転車を漕いで家へと帰る。

事故現場の交差点で信号待ちをしていると、言いようのない気持ちがこみ上げてきた。

今までぼんやりとしか考えられなかった『死』が、身近なところにまで迫ってきてる。

残された時間の中で、わたしになにができるんだろう。

なにをすればいいんだろう。

生きてる意味は未だに見つけられないけど、生きてることが前ほど苦ではなくなった。

それどころか、今では……死にたくないとさえ思ってる。

「どうしたんだよ、んな思いつめたような顔して」

横から突然スッと顔を覗きこまれた。

「わぁ」

ビックリして、思わず自転車から落ちそうになった。

「し、慎太郎!」

そこには部活帰りの慎太郎がいて、目をパチクリさせている。

「と、突然現れないでよっ」

しかも、顔、近いんだけど。

恥ずかしくてパッと顔をそらす。

「わりーわりー」

そんなわたしを見てクスクス笑う慎太郎に、ムッと唇を尖らせた。

「怒るなよ」
「うるさい、怒ってない」
「悪かったよ」
「だから、怒ってないってば」

不思議。

まるで告白なんてなかったかのように、普通に話すことができている。