もしも明日があるのなら、君に好きだと伝えたかった。


言われた通り、とりあえず下へ降り、ダイニングへ入るとお父さんとお兄ちゃんがスタンバイしていた。

いつもなら先に食べてるのに、今朝はわたしを待っていてくれたらしい。

ふたりに挨拶してから食卓に着くと、お兄ちゃんはいつも通りに、お父さんは新聞からわたしに視線を移して「おはよう」と小さく声を出す。

朝、いつもは忙しなく動いているお母さんも、お父さんの隣に座り「全員揃ったからいただきましょうか」なんて言いながら笑っている。

家族全員で朝ご飯って、なんだかちょっと照れくさい気もするけど……。

でも、うん、あれだよ、悪くない。

手を合わせて箸を持つと、目の前のお母さんがおずおずとわたしに千円札を三枚差し出した。

「これで足りるかしら?」
「え?」
「お友達とパフェを食べに行くんでしょ? 十九時までには、帰ってらっしゃい」
「なんだ、出かけるのか? そしたら、これも使いなさい」

お父さんがズボンのポケットから財布を取り出し、わたしに五千円札を差し出す。

「え、え?」
「まぁ、あなたったら五千円は多すぎるわよ」
「し、しかしだなぁ、今時の女子高生は遊ぶのにもなにかとお金がかかると師長が言ってたぞ」
「あら、そうなの? 無駄遣いしないようにね」

目の前のやり取りを呆然と見つめる。

あっさり認めてくれた上にお小遣いまでもらえるなんて、拍子抜けしてしまう。

今までちゃんと向き合ってこなかったけど、こんなに……こんなに簡単なことだったんだ。

「よかったな。父さん、俺にはそんな大金くれたこともないよ」

お兄ちゃんが隣で笑った。

ほのぼのとしたどこにでもあるような家族の風景。

胸がジーンとして、そして、激しく締めつけられる。

ジワジワと涙さえ浮かんできた。

心の奥底からふつふつと湧き上がる感情にフタをする。泣かない。泣いちゃいけない。

死にたくない、なんて、そんなこと……望んじゃいけない。