もしも明日があるのなら、君に好きだと伝えたかった。

帰りのタクシーの中、時刻はすでに0時を回っていた。

お父さんはあれから三十分もしないうちに、わたしの元に帰ってきた。

患者さんはどうやら持ち直したらしく、安堵の表情を浮かべるお父さん。

相変わらず寡黙なお父さんだけど、これまでに感じていた苦手意識はもうない。

「お父さん……」
「なんだ?」
「ごめん、なさいっ……」
「どうして謝る?」
「さっき……ひどいこと言っちゃったから」

お父さんとお母さんに向かって『死にたい』なんて言ってしまった。

命の現場で働くお父さんにとって、その言葉がどれだけ重い言葉なのかということをさっきの一瞬で理解した。

命に対してまっすぐ向き合うお父さんに言うべきことじゃなかったんだって。

罪悪感があふれ出して止まらない。

「わ、わたし……死ぬっていうことを、よく理解してなかった……軽く捉えて……甘く、見てたの。だから、ごめん、なさいっ……」

ツラくて、苦しくて、涙が出た。

お父さんがわたしのことをどう思っていようと、いなくなればいいだなんて思うはずがない。

「いや、俺のほうこそすまなかったな……仕事ばかりで、おまえが苦しんでいることに気がつかなかった……娘にあんなことを言わせるなんて俺は……父親失格だ」

「ううんっ……そんなことない。さっきのお父さん……すっごく、カッコよかったよ……」

静かに涙を拭うと、お父さんはしばらくの間黙り込んだ。

目頭を押さえながら、ズズッと鼻をすするお父さん。

「まいったな……琉羽に、そんなことを言われる日がくるとは……っ」

「お、とさん……」

やだ、泣かないでよ、どうして……。

わたしはお父さんに嫌われていると思ってた。

でも、そうじゃない。そうじゃなかったんだ。