もしも明日があるのなら、君に好きだと伝えたかった。


「おか、さん……?」

なんで、泣くの……?

「いつも、いつも、いつも……どう、して」

お母さんは両手を伸ばしてわたしに近寄ってくる。どうすることもできずに、ただただ固まることしかできない。

今までに見たことのないお母さんの姿に、このあとに待ち受ける行動がわからなかった。

──ギュッ

えっ?

信じられなくて、目を見開いたまま固まる。

お母さんが……わたしを抱きしめてる?

パニックになりそうな頭でわかるのはそれだけ。

「死にたい……なんてっ。あんたは……っなんてこと……言うの……」

最初は遠慮がちだったお母さんの腕が、キツくキツくわたしを抱きしめる。

えっと……頭をフル回転させる。

こんな状況になっていることが信じられなくて、どうすればこんな結末にたどり着くのかいくら考えてみてもわからなかった。

「おか、さん……知らなかった……そこまでっ、琉羽を、追いつめて……いたなんてっ」

お母さんの悲痛な声が耳元で聞こえて、なんだかよくわからないけど……とても苦しい。

「おね、がいだから……っ死にたい、なんて……言わ、ないで……っ」

ウソ、でしょ。

お母さんがそんなことを言うなんて。

わたしのためを思って泣くなんて、なにかの冗談なんでしょ?

ねぇ……だって、ありえないよ、こんなこと。

「母さん、とりあえず一旦家に入ろう」

いつの間にかお父さんがそばにいて、泣き続けるお母さんの肩を叩いた。

放心状態のわたしは、ズキズキとした膝の痛みでハッと我に返る。

「う……いった」

立っていられなくなってその場に崩れ落ちた。

そして右膝を抱えてうずくまる。

「どうしたの!?」
「転んで怪我したんだよ。右膝が痛むらしい」

わたしの代わりにお兄ちゃんが答える。

「ちょっと見せてみなさい」

お母さんは同じようにしゃがんで、わたしのズボンの裾を下からめくろうとした。