もしも明日があるのなら、君に好きだと伝えたかった。

「皇! 琉羽っ!」

家の近くまできた時、遠くからバタバタと走ってくる足音が聞こえた。

「母さんだ。おまえが走って行ったあと、追いかけようとしたのを俺が引き止めたんだ。きっと、心配してる」

「お、おろして」

「でも、足が」

「いいからっ」

こんな格好を見られたら、またなにを言われるかわからない。

お兄ちゃんに迷惑をかけてなにやってるのって言われるに決まってる。

わたしはお兄ちゃんの背中から飛び降りるようにして地に足をつけた。

右膝にビリビリと電流が流れるような激しい痛みが襲ったけど、今はそんなことはどうでもよかった。

「琉羽っ!」

──ドクドク
──ドクドク

心臓の音がやけに耳につく。

なんて言われるんだろう。

きっと……怒られる。

家族に迷惑かけてって……呆れられる。

一歩も足が動かなくなって、その場に立ち止まる。

だけどお母さんはどんどん距離を縮めてきた。

そして息を切らしながらわたしの前で足を止める。遠くにはお父さんの姿もあった。

「あんたって子は……っ、ほんとに……なに、やってるの……」

もう、終わった……完全に。

嫌われた、絶対に。

見離された、確実に。

「どれだけ……心配させれば……気が、済むの……っ」

だけどわたしの思惑とは裏腹に、お母さんの顔が苦痛に歪む。

そして、なにかをこらえるように歯を食いしばるお母さん。

いつも冷静沈着な瞳が、戸惑うように揺れている。その目にはどんどん涙がたまっていき、頬に流れた。