もしも明日があるのなら、君に好きだと伝えたかった。


「琉羽? 突っ立ってないで、おまえも早く家に──」
「さわらないでっ!」

ものすごくイライラして、お兄ちゃんの手をパシッと振り払った。素直に……従えるわけないでしょ。

「放っておいてって言ってるでしょ? こんな時だけ、お兄ちゃん面しないでよ! こんな家族、大っ嫌い!」

お兄ちゃんを押しのけ、そのまま家を飛び出した。胸が張り裂けそうなほど苦しくて、止まったはずの涙が再び浮かんだ。

「はぁはぁ……」

く、苦しい。

ただ闇雲に走っているだけで、どこをどう走っているかがわからない。

それでもわたしは、住宅街の中を全力疾走し続けた。公園を過ぎて、次に見えてくるのは小学校。そして、小学校の近くには幼稚園がある。道沿いに進んでいると、なにかに躓いて派手に転んだ。

「いったぁ……っ」

コンクリートに全身を激しく打ちつける。鈍い痛みが全身を襲った。

「うっ……うぅ……っく」

痛い……痛いよ……っなんで、わたしばっかり……。

わたしがなにをしたっていうの。

どうしてこんな目に遭わなきゃいけないの。

もう嫌だよ……。

痛いのは身体だけじゃなくて、心の奥底がヒリヒリうずく。

コンクリートの上に伏せたまま、涙が次から次へとあふれ出て止まらない。

「おい、大丈夫か!?」
「……っ」
「なにやってんだよ、もう。しっかし、派手に転んだなぁ」

頭上から呆れたような声が降ってきた。

「な、んで、きた、の……っ?」

放っておいてって言ったでしょ?

わたしなんかいないほうが、みんなが幸せになれるんだよ。

「なんでって、家族だからだろ? 俺にとって、琉羽は大事な妹だからだよ」

そばで足音がして、全力疾走のわたしを追いかけてきたからなのか、お兄ちゃんの呼吸も乱れている。

「な、によっ……いつも、わたしのこと……っく」

嗚咽がもれてうまく話せない。それでもわたしは、止まらなかった。