今まで何度も飲みこんだ言葉が、堰を切ったようにあふれて止まらない。
「そしたらお兄ちゃんと比べられることも、大嫌いな勉強を毎日強制的にやらされることも、大好きなバスケをやめることもなかったのにっ!
お父さんとお母さんには、お兄ちゃんさえいればよかったんだよ! なにをやってもうまくいって、成績だってよくて、自慢の息子で……落ちこぼれのわたしは、なにをやってもダメで……っうまく、いかなくて……っ!」
なん、で……涙が出てくるの。
こんなに苦しいの。
親の前なんかで泣きたくないのに……。
「お母さんはため息ばっかりで……っ。わたしなんて、いないほうがよかったんでしょ? 死にたいって……何度も思ったよ! だってわたしには、生きてる意味なんてないんだもん! こんなわたしなんて、死んだほうがいいんだよっ!」
泣きたくなんかないのに、涙がひとつぶ頬に流れた。
でも、もう止められなかった。
「わたしが死んだら……お母さんだって、せいせいするに決まって──っ」
──パシンッ
乾いた音が辺りに響いた。
なにが起こったのかがわからなくて頭がフリーズする。頬に感じるジンジンとした痛み。
厳しい顔つきで、わたしを見るお父さん。
威厳があるお父さんの顔が、さらに厳しくなっている。
明らかに怒っているということがわかった。
わたしはとっさにジンジンする頬を手で押さえる。
「なんてことを言うんだ、おまえは!」
今まで聞いたことのないような感情的な声に、ドクドクと鼓動が高鳴る。
なに、よ。
いつもは、わたしに見向きもしないくせにっ。



