「泣いて情けない姿見せたから、今度はカッコいいとこ見せてやるって……ガキなりに、そんなことばっか考えてた」
照れたようにはにかむ慎太郎。
「だから、俺はなにがあっても琉羽を守るよ」
「なに、それ」
「まだまだカッコいいとこ見せてないし」
「そんなこと……っ」
慎太郎はいつだってわたしにとって救世主で、まぶしすぎる存在だった。
「慎太郎は……今のままでも十分カッコいい」
「え?」
「あ、えと、べつに深い意味はないよ……っ」
わー、カッコいいなんて……なに言っちゃってんの、わたし。
恥ずかしくてたまらないんですけど。
「はは……サンキュー」
後頭部に伸びてきた慎太郎の手が、優しくわたしの頭を撫でた。
月明かりに照らされた慎太郎の横顔に、心臓がトクンと脈打つ。
なんなんだろう、この気持ちは。
なんでこんなにドキドキするの、苦しいの。
「そろそろバスの時間だな」
スマホで時間を確認する慎太郎。
「え、あ、もう?」
「もう一本遅らせてもいいけど、親、心配するんじゃねーの?」
一気に現実に引き戻された。
そうだよ、これから帰らなきゃいけないんだ。
気持ちが沈んで、深い闇の中に落ちていく。
帰りたくない。
でも、これ以上慎太郎を付き合わせるのも悪い気がする。



