もしも明日があるのなら、君に好きだと伝えたかった。


「おー、佐上! 今帰りか?」

戸惑いながらも、教室を出て生徒玄関に向かって歩いていると、担任の山田先生に出くわした。

熊みたいに大柄な山田先生は、いつどんな時でも暑いらしく、青いチェック柄のハンカチで汗を拭っている。

今日も例に違わず、額に浮かんだ汗をハンカチでフキフキ。思わずじっと見つめていると、先生は白い歯をむき出しにして豪快に笑った。

それを見て、またしても懐かしさを感じてしまう。

「いやぁ、ジメジメしたこの時期は暑くてな。嫌になるよ、まったく。ハッハッハ」

ガハガハと大口を開けて笑う山田先生。なにが面白くて笑っているんだろう。わたしにはよくわからないけど、この豪快な笑い方は見ていてスッキリするので嫌いじゃない。

「そうだ、おまえ。化学のレポートが出てなかったぞ。明日までに提出するように。それを言おうと思って呼び止めたんだ。忘れそうになったよ、ハッハッハ。明日必ず持って来いよー。じゃあな、気ぃつけて」

笑いながらこの場をあとにする山田先生。

化学のレポート。たしかにわたしは、過去にも一日遅れで提出したっけ。ついうっかり、家に忘れてしまったんだ。

普段めったに忘れ物なんてしないほうだったから、はっきりと覚えている。

なにもかも、今この場の空気さえも懐かしい感じがする。

それはやっぱり、一度過ごして来たからなのかな。いやいや、そんなはずはない。

自問自答を繰り返し、頭を左右に振る。とにかく帰ろうと思って、再びゆっくり歩き出した。

途中で最終下校を知らせるチャイムが鳴って、部活帰りの生徒たちがバタバタと走ってくる。