「なんか深刻な悩み?」
「あ、いや、そういうわけじゃ……」
「カッコいいこと言ったけど、結局のところは死ぬのが怖いってのが大きな理由かもな」
「死ぬのが、怖い?」
慎太郎にも怖いものがあるの……?
「死ぬ時って痛いのかとか、死んだあとってどうなるのかとか、俺が死んだら周りの友達とか、親とか……悲しませることになるなって。ほら、親より先に死ぬのは、親不孝者だって聞くし」
「…………」
「それになによりも、自分の人生が終わることを想像するだけで怖いっつーか……今が楽しいから、死にたくないなって思う」
「そっ、か」
聞けば聞くほど自分が情けなくて仕方なくなる。
今が楽しいとか、考えたこともない。
「わたしが死んだら、悲しんでくれる人っているのかな……」
「なに言ってんだよ、いるに決まってるだろ」
「そう、かな?」
「おまえの親や兄貴とか、近藤とか……俺、だって」
「慎太郎も悲しんでくれるの?」
「はぁ? 当然だろ」
「あはは、ありがとう」
こんな状況なのに、笑ってしまった。
「なに笑ってんだよ、マジだからな? 琉羽が死んだら、親や兄貴の次に、俺が悲しい」
そんなこと……真剣な顔で言わないでほしい。
慎太郎の言葉は、いつだってわたしの中にまっすぐに落ちてくる。
綺麗で純粋な慎太郎の言葉に胸が苦しくなった。
わたしは……そう言ってくれた慎太郎を残して、もうすぐ死ぬ。
悲しませてしまうことになるのかな。
罪悪感がないと言ったらウソになるけれど、これは変えられない運命なんだから仕方ない。
そう……仕方ないんだ。
「でも、もしも……事故、とかさ。そんなんで突然死ぬことだってあるじゃん?」
「なんだよ、マジで。どうしたんだよ? らしくないぞ」
「いや、あの、うん。ふと、ね」
「ふと、そんなこと思うのか?」
慎太郎が怪訝な表情を浮かべながら、わたしの意図を読み取ろうと顔を覗き込んでくる。
今目を合わせると、わたしが未来からやってきたこと、この先、死んでしまうこと。
想像もつかないことが起こっているということ、全部を見透かされてしまいそうで怖い。
それほどまっすぐで、透き通るような目をしている。だからわたしは、慎太郎から逃げるようにしてうつむいた。



