「行こ」

自分の発言を振り返って焦っているわたしの手をギュッと握ると、慎太郎はどこかへ向かって歩き出した。

「ど、どこ行くの?」
「近くの公園」
「あっ、えと、手……」
「いいだろ、べつに」

離そうとすると、より一層強く握られた。

さっきは人混みだったし、はぐれないように必死だったからあまり意識していなかったけど……。

なに、これ。

なんで手を繋いで歩いてるの。

ドキドキが止まらないよ。

公園にはお祭り帰りと思われるカップルや高校生くらいの男女がたくさんいた。

わたしたちは空いたベンチに腰かけて座り、慎太郎はそこでようやく手を離してくれた。

普段なら夜の公園は不気味だけど、今は微塵もそんなふうに思わない。

「慎太郎って、ひとりっ子だったよね?」
「そうだけど、なんだよ、急に」
「いや、どうだったかなって。意味はないんだけど」

自分でもなんでこんな話題を振ったのかよくわからない。

「琉羽は兄貴がいるんだっけ?」
「うん……わたしとはちがって、なんでもパーフェクトにこなす出来過ぎたお兄ちゃんがね」
「なんか、すっげートゲのある言い方だな。どうしたんだよ?」
「…………」
「琉羽?」
「慎太郎はさ……なんのために生きてるの?」
「え、は?」

意図がわからないのか、困惑気味の慎太郎。

「なんだよ、いきなり」
「単純に知りたいだけだよ」
「へんな奴だな……ったく」

そう言いながらも考えてくれているのか、慎太郎が「うーん」と唸る。

その横顔は、とても真剣だ。

「俺もよくわかんねーけど」

そんな前置きをしてから、慎太郎が語り出した。