「次のバスは十五分後だな。つーか、十五分感覚で臨時バスが出てる」
「え、あ、ほんとだ」

時刻は二十一時を少し回ったところ。

今からだと家に着くのは二十一時半過ぎ頃になる。

どうしよう、本気で帰りたくない。

怒りに任せて電話を切っちゃったし、お母さんに会いたくない……。

「どうした?」
「え?」
「さっきから様子がおかしいなと思って」
「ううん……なんでもない」
「なんだよ? なんかあるだろ? 言ってみ?」
いいのかな、言っても。でも、そう言ってくれてるし、ここは慎太郎に頼るしかない。
「も、もう少し一緒にいたいんだけど……ダメ?」
「え……?」

遠慮がちに聞くと、慎太郎は大きく目を見開いた。目をパチクリさせながら固まっている。

あれ?

なんだか、嫌そう……?

でも、嫌というよりは、ビックリしているような。

「ダメなら、べつにいいんだけど……っ」
「いいよ」
「え、あ」
「俺も……もう少し琉羽と一緒にいたいと思ってたから。一本、バス遅らせる?」

──ドキン

まっすぐにわたしを見下ろす優しい瞳に、吸い込まれてしまいそうになる。

照れたようにはにかむ慎太郎。

ねぇ、待って、わたし、もしかして、とんでもない言い方をしてしまったんじゃ……?