花火を観る気にはなれなかったけど、戻らないわけにはいかなかったので、わたしは再びみんなのところへ。
すると、わたしに気づいた慎太郎が「大丈夫か?」と声をかけてくれた。
「うん……ごめんね。大丈夫だよ」
「そっか」
そう言って口元をゆるめる慎太郎。
その横顔を見ていると、少しだけ気持ちが落ち着いた。
はぁ、でも……帰りたくないな。
このままずっと、花火が終わらなきゃいいのに。
だけど無情にも花火は終わってしまい、見物客は帰り支度を始める。
なんとなく人の波に乗って歩いていると、自然と帰る流れになってしまった。
やだやだ、ほんとやだ。
「じゃあ、俺はなっちゃんを送ってくから」
「琉羽、またね! 今日はありがとう」
「うん、気をつけてね」
「またな!」
菜月と浩介くんは電車で、わたしと慎太郎はバス。
駅のロータリーでふたりと別れたあと、慎太郎と並んで歩き出す。
バス乗り場に着くと、祭り客だと思われる人がたくさん並んでいた。