もしも明日があるのなら、君に好きだと伝えたかった。


慎太郎の言葉でわたしたちはそれぞれ食べたい物を近くの露店で買うと、座れる場所を探して神社のそばの川沿いを歩いた。

辺りはすっかり日が暮れて薄暗い。もうすぐ花火が始まる時間だからなのか、みんなが川原沿いに並んで座って場所取りをしている。

「こことかどう? ちょうど四人並んで座れるぞ」

喧騒から少し離れたところに空いたスペースを見つけた。

わたしと菜月を真ん中にして、石段の上に並んで腰かける。

わたしの隣に慎太郎、菜月の隣に浩介くんが座り、浩介くんは早速焼きそばを食べ始める。

「うまっ。なっちゃんも食う?」
「わたあめ食べるから、いらない」

ふたりのやり取りを何気なく聞きつつ、残りのわたあめをパクッと口に入れる。

「んー、あまーい」

幼稚園の年少の頃に、一度だけお父さんやお母さんとお祭りに来たことがある。

ふわふわの見た目に目を奪われて、ワガママを言って買ってもらったのを覚えてる。

その時に食べた味と同じだ。

子どもの頃の思い出といえば、それくらいしかない。

大きくなってからの記憶のほうが残りそうなものなのに、なぜかわたしには不思議と幼稚園の年長の頃の記憶が曖昧というか、思い出せないことのほうが多いんだよね。

「そんなに好きなのかよ、わたあめが」

パクパクと無意識にわたあめをほお張っていたわたしの横で、慎太郎がからかうように笑っている。

「好きっていうか、思い出だよ。懐かしいなぁって」
「思い出、ね。わたあめが?」
「うん、幼稚園の時にお父さんにわたあめ買ってもらって食べたんだ」
「幼稚園の時って、古い思い出だな。祭りって毎年行くもんなんじゃねーの?」
「うーん……どうだろ」

普通の家庭ではそうでも、うちはちがうからよくわからない。

そういえば小学生になってからは遊びに連れて行ってもらった記憶もないし、家族での思い出はほとんどない。

その頃からうちは、冷めた家庭だったのかな。