もしも明日があるのなら、君に好きだと伝えたかった。

人混みを抜けて神社の奥までやってきたわたしたち。

「ほら、わたあめ」
「え、でも……」
「いいから、遠慮すんなって」
「あ、ありがとう」

表通りほどの賑わいはないけれど、神社の奥にもお店が軒を連ねていて、慎太郎はそこでわたあめを買うとわたしに手渡してくれた。

まさか本気だと思わなかったから、少しビックリ。

パクリと口に入れると甘さが口の中に広がった。

「ふわふわだ……慎太郎も、食べる?」

わたあめを慎太郎の口元目がけて差し出す。

「いや、俺はいいよ。琉羽が食ってるの見るだけで、腹いっぱい」

そういえば、慎太郎は甘いものが苦手だったっけ。

「なっちゃんもわたあめ食う? なんでも奢っちゃうよー!」
「自分で買うから結構です」
「ええっ、そんなこと言わずにさぁ! 俺に花を持たせてよ」
「いいよ、そんなの。そこまでしてもらう間柄でもないし」
「俺はそんな間柄になることを望んでるんだけどなぁ。いつでもウェルカムだよ」
「な、なに言ってんの」
「浩介、それぐらいにしとけよ。困ってるだろ」

慎太郎がふたりの間に割って入る。

困ってる人を見ると放っておけないのは、今も変わっていないらしい。

「なんだよー、慎太郎。佐上さんといい感じなんだから、俺に協力してくれてもよくね?」
「はぁ? なに言ってんだよ、バカ」
「うっわ、バカって、慎太郎がバカって言った!」

わぁぁぁっとわざとらしく泣き真似をする浩介くん。

自由奔放というか、なんというか。

きっと感情のままに生きているんだろうな。

わたしにないものを持っている浩介くんが少し羨ましい。

「佐上さんもさ、こんな奴のどこがいいの?」
「え?」
「やっぱ、顔?」

目の前には浩介くんのドアップがあって、わたしの目線に合わせるように屈んで顔を覗き込んでくる。

改めて見ると、すごくイケメンだ。

女の子がドキドキする仕草とか、行動を心得ているっていうのかな。

柔らかくはにかんで首を傾げている姿は、狙ってやっているようにしか思えない。

だからなのか、なんだかドキッとしてしまう。

「ち、近い、です……」

浩介くんの胸を手で軽く押し返す。

すると浩介くんはすんなり後ろへと引いた。

「こんくらいで照れてんの? 佐上さんって、見かけによらずウブなんだ」
「……っ」
「男慣れしてますって感じで、遊んでそうなのに」
「おい、あんまこいつをイジメんなよ」

慎太郎がわたしと浩介くんの間に割り込んできて、目の前に立った。

「琉羽はおまえが思ってるような女じゃないから」
「へいへい、悪かったよ」
「ったく、誰に対しても顔覗き込んだりするのは、いい加減やめろよな」
「なんだよー、なっちゃんの時はなにも言わなかったくせに、佐上さんのことになると必死だな、おまえ」
「ちげーよ、前から思ってたんだ」
「へいへい、そうかよ」

『琉羽はおまえが思ってるような女じゃないから』

慎太郎……わたしね、慎太郎が思ってるような女でもないよ。

だからそんなふうに言ってもらう資格なんてないんだ。

だけど、どうしてかな。

そう言ってもらえて嬉しいと思ってるわたしがいる。

「ほらさっさと買って座れる場所探そうぜ。立ったまま花火観るのは疲れるだろ」