夏休みが始まって三日が経った。

毎日のようにわたしは朝から夕方まで塾の夏期講習へと通っている。

真夏ということもあって、今日も朝からものすごく暑かった。

夕方になると暑さは少し緩和されるけど、時々吹く風は熱風で、自転車で国道沿いの歩道を駆け抜けるわたしの体力を凄まじい勢いで奪っていく。

その上今日は運が悪く、何度も信号につかまってしまっている。

そのたびに背中に汗が伝って、不快感が増していく。

「はぁ」

大きなため息の原因はたったひとつ。

家に帰るのが億劫で仕方ない。

過去に経験した壮絶な夏休みを繰り返しているんだもん。

夏休み前のテストは過去よりもできたはずなのに、お母さんは納得してくれなかった。

さらには通知表を見てまたため息。

どうしてオール五じゃないのかと呆れられてしまった。

『お兄ちゃんは高校の時もトップで、すごかったわよ』

『レベルの低い一般の高校でトップになれないなんて、どういうことなの?』

いやいや、この地域じゃ一番の進学校だよ、お母さん。

お母さんはわたしがお兄ちゃんと同じじゃなきゃ認めてくれない。

お母さんの言う『すごい』の基準はお兄ちゃんで、それに及ばないわたしは普通以下なのだ。

なにかとお兄ちゃんと比べられて、いい加減うんざりだ。

家に着くと、誰とも顔を合わせたくなかったので、そろりと二階の自分の部屋へ直行する。

居心地が悪くて落ち着かないし、家にいてもわたしを待ってるのは勉強のみ。