「熱なんかねーよ、バーカ」

ちょっとムッとしたように唇を尖らせる慎太郎。

「バカって言わないでよ、バカ慎太郎」
「はぁ? なんだと」

気軽にこんな言い合いをしているほうが合っている。

似合わない雰囲気になると、どうすればいいのかわからないよ。

「ほら、早く手を退けろよ」
「あ、うん」
「ほらよっと」

困ったような顔をしていたのを察してくれたのか、慎太郎は自転車を引き起こすと同時に立ち上がった。

そしてわたしも、そんな慎太郎に続いて立ち上がる。

あれ?

そういえば、慎太郎はどうしてここに?

ユニフォームを着てるっていうことは、今は部活中のはずだよね?

「わたしに用事でもあった?」
「あー……いや、明日から夏休みだし、偶然琉羽が通りかかったのが見えたから、顔でも見とこうと思って」
「あ、そう、なんだ?」
「おう。まぁ、暇ならいつでも連絡してこいよ。じゃあな」

慎太郎はそれだけ言うと、わたしの頭を軽く撫でてから体育館のほうへと走って行った。