「手、退けて」

不意に慎太郎の目がわたしを捉えた。

慎太郎の真ん丸い瞳の中にわたしが映っているのがはっきりとわかった。

まっすぐな視線に整った顔。

小学生や中学生の頃とはちがって、大きく男らしくなった慎太郎の姿になぜかそわそわしてしまう。

「あのさ……」
「うん?」
「そんなに見つめられると、普通に恥ずいから」

慎太郎は気まずそうにわたしからパッと目をそらす。その横顔は真っ赤だ。

「ご、ごめんっ!」

わたしもパッと顔を伏せた。

きっと、わたしの顔も真っ赤だ。

心臓もすごく速く動いてる。落ち着け、落ち着くんだ、わたしの心臓。

「髪、伸びたな……」

うつむいていると慎太郎の手がスッと伸びてきて、胸下まであったわたしのゆるふわの髪を下からすくい上げる。

──ドキンドキン

髪の毛に神経なんか通っていないのに、触れられているところがものすごく熱い。

「琉羽は、すっげー女らしくなったと思う」

えっ?

「な、なに言ってんの……っ」

一瞬耳を疑ってしまった。

だって慎太郎がそんなことを言うなんて、想像もつかない。

「いや、マジで。かわいくなった」

なに、言ってんの、ほんと。

こんなのおかしい。

視線を感じて恐る恐る顔を上げると、熱っぽい眼差しで慎太郎がわたしを見ていた。

ほんのり赤く染まる慎太郎の頬。

わたしと目が合うと、慎太郎はぎこちなく笑ってくれた。

そんな慎太郎も、たまらなくカッコいい。

「し、慎太郎、熱でもあるんじゃないの……?」

だって、こんな慎太郎は知らない。

わたしの知ってる慎太郎じゃない。

そして、なんでわたしも心臓がはち切れそうなほどドキドキしてんの。

意識して顔が見られない。

慎太郎とこんなに照れくさい雰囲気になるのは初めてだ。

慣れないからかな、落ち着かないのは。